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“来て、観て、触って語ろうDAISY/Plextalkの未来in上田” 【第3回 デイジー/プレクストーク パートナー ミーティング】 開催レポートを掲載しました。
2008年12月18日
全国から約90人が集まり、発表や意見交換
DAISYやプレクストークについて、地域や立場を越えて情報・意見交換や交流をすることを目的として、今年も約90人の皆さんが全国各地からここ「DAISYの故郷」上田に集まりました。
今回のデイジー/プレクストークパートナーミーティングでは、例年のように午前中は、フリーセッションでの体験・交流会、午後は、コアセッションとして静岡県立大学の石川准教授による基調講演に続き、パートナーセッションでは各地で活躍される代表の方による活動報告などがありました。また夜間には希望者による未来セッションも泊まりで行われ、活気に満ちた1日となりました。
昨年は音訳者用デジタル録音機「DR-1」の発売がありましたが、今年の話題はなんと言っても、12月に発売となるポケットサイズのプレクストーク「PTP1」でした。同日にはPTP1の記者発表も行われ、PTP1の展示ブースは終始大賑わいでした。
今年で3回目となった「デイジー/プレクストーク パートナー ミーティング」ですが、これからも毎年続けていく予定です。 広くDAISYを活用して、視覚障害者の生活環境を向上させていくために、情報交換や意見交換ができる場として、全国の皆様にご参加いただけるように、また毎回新しくホットな話題がご提供できるように、今後も情報発信をして参ります。
内容ダイジェスト
(興味のあるコーナー・セッションをクリックしてください)
- □ フリーセッション <体験コーナー> (9:30~11:30)
- □ コアセッション <コアスピーチ> (12:30~14:30)
- □ パートナーセッション <参加者スピーチ・意見交換> (14:45~16:40)
- □ 未来セッション <東御市の保養宿泊施設にて> (宿泊のご希望者とともに)
フリーセッション <体験コーナー> (9:30~11:30)
12月に発売を予定しているプレクストークポケット「PTP1」の他、音訳ボランティア様向けデジタル録音機「DR-1」、図書制作ソフト「PRSPro」、プレクストーク録音機「PTR2」や再生専用機「PTN1」、CD/DVDコピー機「プレクスコピア」を、実際に触ったり試聴したりできるようにしたコーナーです。 当社のスタッフがご説明しながら、皆様から有益なご意見・ご要望をいただくことができました。
コアセッション <コアスピーチ> (12:30~14:30)
[1]「DAISY for All. All for DAISY」
静岡県立大学国際関係学部 教授 石川 准 様
基調講演として、静岡県立大学国際関係学部教授の石川准(いしかわ じゅん)先生に、ご自身も全盲という体験も織りまぜながら、DAISYを取り巻く環境変化についての説明と提言をいただきました。
演題は「DAISY for All, All for DAISY」。誰もがDAISYという道具を使って「読みたい本を読みたいときに読める」という共通のビジョンを多くの人が共有して始まったのがDAISYプロジェクトで、国際的な高い評価も得ています。
「DAISY for All」は、視覚障害者だけのためのDAISYから、学習障害者や高齢者、健常者も含めて、すべての人のためのDAISYへと広がっているという意味です。 「All for DAISY」は、すべてのドキュメントをDAISYに、Wordでも、テキストでも、教科書でも、小説でも、すべてのものがDAISYコンテンツとして提供される可能性があるという意味です。
DAISYを使える機器やコンテンツやソフトの種類が広がり、ポータブル化して持ち運びも便利になり、DAISY図書の情報提供施設への期待も高まっています。そんなDAISYの「今」と「課題」を改めて知ることができた講演でした。すぐに聴講者の心をつかんで、思わず引きつけられてしまう話しぶり、そんな魅力たっぷりの講演から、その一部をお伝えします。
DAISY2.0時代の到来
最初に音声合成エンジンによる読み上げを、石川先生のDAISYプレーヤーで聴き比べをしました。ソフトも改良されてすいぶん自然な発音になっているのがわかります。「視覚障害者としては、音質よりも反応の良さ、軽いものを優先しますが・・・」とコメントしながらも、機器もテキストDAISY対応やポータブル化が進み、いよいよDAISYも第二世代のDAISY2.0時代が到来したことを説明されました。
主流企業がDAISYに理解
今では、マイクロソフト社とデイジーコンソーシアムが協力して、Wordで作った文章をテキストDAISYで取り込んでくれるソフトも出ています。それをテキストも読める新しいDAISYプレーヤーで聞くことができます。
DAISYプレーヤーでとりあえず読める程度ですが、大事なのはこれがマイクロソフト社が開発したソフトであるということ。 主流の企業が、そのようにDAISYに理解を示していることが重要です。
DAISYで広がる本の読み方
本の読み方は、ふた通りあって、ひとつは仕事のために買ってきた本を電動カッターで裁断して、OCRスキャナーで読み取って聞く方法、もうひとつがDAISY図書として余暇に楽しんで読む方法で、DAISY図書が増えたおかげで楽しんでよく読むようになり、この1年で100冊くらい読んでいます。
「All for DAISY」の言葉にあるように、DAISYコンテンツの種類が増え、マルチメディアDAISY化が進む中で、図書館の役割は拡大しており、視覚障害者への情報提供施設としての点字図書館だけでなく、学習障害者への情報提供施設として、新しい役割を持つ施設への動きも出てきています。また一方で、ビジネスコンテンツが、著作権の許諾を得て、有償で、広く多くの人に提供される動きもあります。
マルチメディアDAISYへ
今はマルチメディアDAISYでテキストも読めますので、本の読み方も変わって来ています。視覚障害者の高齢化は顕著で、レベルや階層は難しい、カセットテープレコーダー以上に複雑な機能は不要という人たちがいます。
他方で、DAISYを使って教科書を作ったり学術的な本を読む人たちにとっては、今の機能だけでは足りません。
例えば、パソコンで本を読むときは、頭の中の理解としては、1段落が横に走ってそれが縦に並ぶ、2次元的なデータの配列になっています。
DAISYで読むときはどうなっているかというと、1本の帯が横に続いていて、レベルを変えたときワープするというイメージで音が流れます。
小説なんかはそれでいいのですが、何か考えなければならないときは、2次元的に展開できるような、それに対応する操作系が必要です。
ユーザーや目的によってニーズは違う
人の読んだ録音図書とテキスト情報がある場合には、それぞれメリット、デメリットがあります。テキストのデメリットは、読み間違えてしまうということです。テキストDAISYでDAISY図書を作るとき、読み間違ってもよい、という判断と、読み間違ってはいけないので、すべてふり仮名をつけて編集する、という判断があります。教科書のようなものは、間違ってはいけない。
理想を言えば、すべてにふり仮名をつける、という編集が必要かもしれません。ただし、読みたいときすぐに読みたい本を読めたり、人間の声のほうが安心で理解しやすい、というニーズは満たされません。
それぞれ一長一短で、ユーザーや目的によってニーズは違います。すべてを理想的に満足させることはできませんので、目的によって優先順位が変わると考えるべきです。たとえば早さ重視、正確さ重視、心地よさ重視、何が重視されるべきかで変わってきます。
DAISYをめぐる新しい課題
これからは、テキストやマルチメディアが持っている特性を生かせるような操作方法に変わって行くだろうと思います。そういう意味でも、DAISY2.0時代の幕開けだと言えます。パソコンでの読書とDAISYプレーヤーでの読書はあきらかに違います。それをどういうふうに情報を埋めていくか考える必要はあります。またDAISYでは、テキストにいろんな情報を埋め込めます。
DAISYなら、もっと出来ることはたくさんあります。例えば、テキストDAISYで、表を理解しやすいように読むためには、プレーヤー側での配慮も必要です。これからは、新しいマルチメディアDAISYに見合うような改良が必要です。
ルールや規格もそうだし、DAISYプレーヤーもどんどん進化していく時代です。
ビジョンに向かってタスキをつなぐ
課題があるというのはいいこと、やるべきことがあるのはいいことです。
マルチメディアDAISYでは、使いやすさと機能を全部考えて、高度な開発が必要ですし、新しい編集ソフトも作っていかないといけません。音だけでいい人もいれば、画面に表示もしてほしい人もいる、ニーズは多様化しています。編集ソフトも音声対応だけではありません。ますます、DAISYをめぐる状況は目を離せません。
そうした中で、駅伝であれば、「誰でも読みたい本を読めるようにする」という共通のビジョンに向かって、タスキをつないでいくようにやっていけば、やりがいもあり、全体としても良い方向に進むのではないかと思います。
[2]「海外の先端サービスの状況および当社における今後の研究開発について」
シナノケンシ(株) 主任研究員 西澤達夫
当社の主任研究員から、米国におけるDAISYサービスと、当社における今後の研究開発について説明させていただきました。
米国ではNLS(議会図書館)が2009年にデジタルサービスへ移行することや、RFB&Dによるダウンロードサービス、BookshareによるテキストDAISYサービス、NIMACによる教科書配信が開始されるなど、ここに来て動きが活発になってきています。
また、音声のみでなくテキストや画像との組み合わせで作られる「マルチメディアDAISY」に向けた当社の活動状況や、各社から販売されている小型DAISYプレーヤーのファイル管理に関する情報などをご説明しました。
パートナーセッション <参加者スピーチ・意見交換> (14:45~16:40)
各団体の代表者の方から、それぞれの活動の最新情報や今後の課題について発表していただきました。機器の操作方法のお悩みから後継者の育成など、各団体の抱える問題は様々で、みなさん活発な議論が交わされました。
スピーチ①・・・・・松本市朗読赤十字奉仕団ひびきの会 古澤 由美子 様
スピーチ②・・・・・NPO法人 ロバの会 山田 新作 様
スピーチ③・・・・・筑波大学理療科教員養成施設 南沢 和矢 様
スピーチ④・・・・・アイボランティアネットワーク静岡 稲垣 洋子 様
スピーチ⑤・・・・・埼玉県川越市立図書館 新山 順子 様
スピーチ⑥・・・・・特定非営利活動法人デイジー枚方 小林 妙子 様
スピーチ⑦・・・・・NPO法人デイジー横浜 河井 睦子 様
スピーチ⑧・・・・・全国音訳ボランティアネットワーク 藤田 晶子 様
スピーチ⑨・・・・・NPO法人 DAISY TOKYO 森田 聰子 様
スピーチ⑩・・・・・筑波技術大学 村上 佳久 様
スピーチ⑪・・・・・長野県社会福祉協議会 脇坂 美智子 様
未来セッション <東御市の保養宿泊施設にて> (宿泊のご希望者とともに)
宿泊ご希望者の方と共に、昨年に引き続き今回も東御市の大田区休養村とうぶにて未来セッションを開催しました。ボランティア、行政、メーカーという多様な立場から、DAISYを取り巻く様々な問題や改善点について意見交換が行われました。
「こんな商品を作ってほしい!」というご意見もいただきましたので、今後の開発の参考にさせていただきたいと思います。 また、夜には雪が舞い、朝にはうっすらと野畑に積もりましたが、翌日は爽やかな快晴となりました。
お問合せについて
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【ご連絡先 事務局】
シナノケンシ第2開発営業部